kufsnkkの日記

NKKメンバーがお届けする、日本語教師の日々をつづったブログです。

【連載】第14回 日本で日本語教師 杉野みなみさん

4月になり新学期がもうすぐ始まりますね。日本語教師を目指し外大の門をくぐった学生さんもいることでしょう。

さて、 久しぶりに日本で日本語教師の記事です。海外での様子はもちろんですが、国内での学校の様子も気になりますよね。意外にも海外より国内で教えたい!という学部生の声をよく聞いていました。海外での経験を経て、現在は常勤講師として日本語学校で教えていらっしゃる杉野さんです。

では、よろしくお願い致します!

 

1.経歴
 大学卒業後、ベトナムへ行き、ハノイの日本語センターで勤務開始。現地日系企業内の日本語クラスと、勤務する日本語センターの授業を並行で。様々なことが初めてでしたが、周りの人と協力し合いながら2年半を過ごしました。
帰国後、2011年春から国内の日本語学校で非常勤講師として掛け持ちの日々がスタート。大阪と京都の4校での仕事を経験しました。自分の授業を磨くことに集中する中で学生との付き合いが中途半端になるように感じ、どこかに腰を据えて教えたいなと思っていた頃に現在の学校から声を掛けられ、2016年に非常勤講師から専任講師となりました。


2.現在の仕事
 今わたしは、大阪の日本語学校で非漢字圏の進学希望者向けのコースを担当しています。週に2~3日の授業の他に、日々の授業のプリントやテストの管理、入国の際のクラス分け、行事の企画や手伝い、年間を通しての進学指導、進学先となる大学や専門学校の方とのやり取り、新任講師のケアや指導など、数々の業務をどんどん進めています。

 学校によって、非常勤講師・専任講師にどこまで仕事を任せるか異なります。とにかくフルタイムで働きたいという人もいれば、週3日の授業に全力を注ぎたいから非常勤で、という人も。私の場合は、色々な日本語学校を見比べたいという思いもあって、非常勤で掛け持ちをしていました。それがあっての今なので、体力的には大変でしたが必要な経験でした。


3.日本語学校の学生たち
 日本語学校には簡単に分けると2つのタイプの学生がいると思います。まずはいわゆる語学留学をしに来る人。大半は自分のお金で来るので、非常に熱意のある人たちです。求められることも多いので、かなりの準備をして授業に臨まなければなりません。
 そしてもう一つは、日本で大学や専門学校に進学しようという学生。18歳から20歳くらいの若者たちです。夢を持って日本に来ますが、初めての外国生活や伸び悩む日本語力、日本社会の現実など、大きな壁がどんどん現れます。友達とけんかをしたり、体調を崩したりしながら、みんな懸命に勉強し、立派に成長して1年・2年後に巣立っていきます。また4月から長い1年が始まりますが、3月に良い卒業式を迎えることを私のひそかな目標にして、学生たちと向き合っています。
 ところで皆さんは、『留学』をどのように考えていますか。私は、自分の意志で新しい世界に挑戦するポジティブなこと、とこれまで考えていました。ところが、学生の中には「親が日本人と結婚したから」「本当は英語が勉強したかったけど、親が日本じゃないとだめと言ったから」というなかなかにネガティブに来日する学生もいるのです。彼らはそう簡単には帰国できません。でも日本はそんなに好きじゃない、日本語の勉強はなおさら。日本に興味を持ってくれれば勉強への意欲も自然にわいてくる。最近気づいたことは、日本語教師の本当の仕事は、日本語の勉強にどのように向かわせるか、ということなのです。せっかくの縁だから、日本に来て良かったと思ってもらいたいですよね。

 

4.私が思う日本語教師にとって大切な2つ

1つ目は、社会人としての基本的な知識やマナー。相手にするのは若い学生だけではありません。60歳近い新入生が来ることもあるし、外部の人とのやり取りも結構多いものです。また、人として信頼されるかどうかが教師として信頼されるかにもつながります。
 2つ目は、異なる物事を受け入れる力。好奇心とも言えるでしょうか。留学生との異文化交流は言うまでもなく、日本語教師にも様々な業界の経験者がいます。他者に興味を持って受け入れることが、その後のやり取りをスムーズにしてくれると思います。
 語学学習に学校は必要なくなる、という話も最近聞きますが、私はそうは思いません。新しい言葉は他者とのコミュニケーションに使われて初めて意味を持ちます。現代のスマホ漬けの学生に、人と話してつながる楽しさを思い出してもらえたら、うれしいですね。

 

 

杉野さんの「日本語教師の本当の仕事は、日本語の勉強にどのように向かわせるか、ということなのです。」という言葉、とても心に響きました。日本語を教えること以外の、教師としての役割はとても大きいですね。

また、杉野さんは下記サイト、スタディサプリのページでも紹介されています。こちらも併せてご覧ください。

杉野さん、ありがとうございました!

 

京都外国語大学/卒業後のキャリア(外国語学部 日本語学科日本語教師杉野 みなみさん)【スタディサプリ 進路】